マレーシアにいたときの９．１１

2001年の9月11日、私はマレーシアの首都、クアラルンプールに駐在していました。

アメリカ同時多発テロの当日は華人の同僚Cさんと二人で一緒にオフィスで予算作成のために残業をしていました。

2001年はインターネットもつながっていたはずで、残業中にニューヨークのワールドトレードセンターのツインビルに飛行機が突っ込んだらしいというニュースを知って、そんなことが起こるのかととてもびっくりした気がします。

ただ、Cさんは日本では見かけることができない、大陸的なゆったりとして頼りがいがある人物で、それはそれだということで、引き続きパソコンでエクセルに向かっていた気がします。

テロの後の反応は日本にいるのとちょっと違うかもしれません。

街中のタクシー運転手も、昨日は大変だったなと話しかけてきます。

彼は、ずっとCNNとかBBCをみていたといっていました。

マレーシアは、シンガポールと同様にイギリスの植民地だったので、義務教育を受けた普通の市民、タクシーの運転手にいたるまで高い英語力があり、CNNもBBCもアメリカ英語でもイギリス英語でも関係なく理解できるのか、すごいなあと思いました。

正直なところ、当時の自分の英語力ではCNNやBBCをみていても集中してみなければ理解力が極端にさがる状態でとてもかなわないなと思ったことも覚えています。

そして、誰彼とはなしているとよく言われたのが、

今回のテロは、

神風特攻隊

とか

日本軍の真珠湾攻撃みたいだな、「トラトラトラ」　だろう。

といった指摘であり、戦後教育の知識だけでは、「トラトラトラ」が真珠湾攻撃を実行するときの日本軍の暗号であることも、ぼんやりとしか理解してなく、歴史知識の不足を感じました。

やはり、アジア諸国は第二次世界大戦、太平洋戦争、大東亜戦争の被害者であり、日本軍の侵略をうけているので日本軍のことについても、詳しいだなと思いました。

そういった議論に対して、しっかりとした意見を言うことができなかったのですが、ある場面で、華人の上司Tさんが同席していたときに、

日本軍の真珠湾攻撃は軍事施設に対する攻撃であって、
民間人を対象にしたテロではないんだ。今回のテロと日本軍の真珠湾攻撃は、性質がまったく異なるよ。

という発言をしてくれました。

これには、自分のもやもやした気持ちがすっきりしました。

別に日本軍を美化したいわけではないのですが、今回のテロとも違うと漠然とは思っていたものの、うまく論点を整理できなかったのですが、とても明確に論点をまとめてくらたと思い、自分も知識を高めてTさんのような発言ができるようになりたいものだと思ったことを思い出します。

イスラム対キリスト教という議論もありました。

マレーシアは、イスラム教徒であるマレー人が人口の6割強を占めているからか、

「そもそも、アメリカはイスラエル寄りであって、報道も偏向していた。
中東紛争では、イスラエル側の犠牲者よりアラブ側の犠牲者が多くなったとたんに報道をとめてしまって、フェアではない。だから、アメリカのCNNよりイギリスのBBCのほうが中立的な報道をしているから、BBCをみたほうがよい。」

とか。

「今後もテロの脅威は続くかもしれないから、欧米系の飛行機はあぶないかもしれない。

それに対して、マレーシア航空はイスラム系国家とみなされる。だから、テロの標的になる可能性は低いのではないか。」

などの議論がありましたが、当時は、自分はこうした議論がちゃんとできる知識や経験をもった人間ではない。もっと、勉強して知識を身につけなければいけないし、相手の国籍、人種、宗教がどうであろうとも自分のアイデンティティをしっかりともち、意見をしっかりと伝えることができる人間になりたいなとか、マレーシア駐在中の起こった同時多発テロについては、いろいろなことを考えさせられました。

17年後の現在、自分はどう変わったのか変わっていないのか。

BBCやCNNの理解力は上がったような気がしますし、欧米人でもアジア人でも、外国人に対して自分の意見を伝えることも少しはできるようになったかなと思います。

９．１１が来るたびに、クアラルンプールでの経験を思い出します。